「うちの子、最近めっきり勉強のやる気がなくなってしまって……」
そんなご相談をよくいただきます。 教科書を開いても、ノートを見つめたままフリーズしている我が子を見ると、親としても焦ってしまいますよね。「もっと頑張りなさい」「しっかり復習しなさい」と言いたくなる気持ちもよく分かります。
でも、ちょっと待ってください。 お子さんが勉強の手を止めてしまうのは、やる気がないからでも、能力が足りないからでもありません。ただ「どこでつまずいているか分からなくて、怖くなっているだけ」かもしれないのです。
勉強には、一瞬でその恐怖を消し去る「魔法」があります。それが【さかのぼり学習】です。
今回は、一見遠回りに見えて、実は一番の近道になる「さかのぼり学習」の驚くべき効果と、お家での見守り方のヒントをお伝えします。
1. 「今」の教科書をいくら見ても解けない理由
勉強は、よく「積み木」や「階段」に例えられます。
下の段がグラグラしているのに、その上に新しい積み木を積み上げようとしても、崩れてしまいますよね。勉強もこれとまったく同じです。
今習っている単元(階段の上の段)が分からないとき、いくら「今」の教科書を読み返したり、似たような問題を繰り返し解いたりしても、なかなか理解できません。なぜなら、原因は今そこにあるのではなく、すでに通り過ぎた「下の段」のどこかが抜けてしまっているからです。
逆に言えば、その抜けている場所さえ見つけて穴埋めしてあげれば、子どもたちは驚くほどスムーズに階段を登り始めます。
2. 魔法の「さかのぼり学習」:原因は数学年前にある?
「さかのぼり学習」とは、分からない問題にぶつかった時、プライドや学年の枠を一度横に置いて、「分かる場所」まで大胆に戻る学習法です。
実は、中学生が「数学が分からない」と悩んでいる時、原因を突き詰めていくと小学校の算数に行き着くケースが本当によくあります。
中学1年の「方程式」でつまずいている子 ⇒ 実は、小学5年の「割合」や「分数の計算」の理解が曖昧だった。
英語の「長文読解」でフリーズしてしまう子 ⇒ 実は、中1レベルの「基本の動詞(be動詞と一般動詞の区別)」が抜けていた。
「今の単元が分からない」というストレスを抱え続けるより、思い切って1学年、2学年前、あるいはもっと前に戻ってみる。これが「さかのぼり学習」の第一歩です。
3. 数学年前に戻ることで起きる「3つの変化」
あえて前に戻ることで、子どもたちの心と学習効率には信じられないほどの変化が起きます。
① 「あ、分かる!」という安心感が手に入る
何学年か前に戻ると、当然ですが「解ける問題」に出会えます。「自分にもできるじゃん!」という小さな成功体験が、勉強への恐怖心を一瞬で溶かしてくれます。
② 今の単元に戻ったときに一気に加速する
つまずきの根本原因(グラついていた土台)がガチッと固まるため、不思議なことに、今習っている難しい単元に戻った時、それまでの苦労が嘘のようにあっさり理解できるようになります。
③ 「自分はバカじゃないんだ」と自信を取り戻す
「できない理由」が自分の頭の良し悪しではなく、単なる「穴あき」だったと気づくことで、失いかけていた自己肯定感が戻ってきます。
4. 親御さんへ:子どものプライドを傷つけずに「さかのぼる」コツ
最後に、お家でこの「さかのぼり学習」を取り入れる際の、とても大切な注意点をお伝えします。それは、子どものプライドを絶対に傷つけないことです。
中学生や高学年の子どもにとって、小学校のドリルや前の学年の教科書を引っ張り出されるのは、少し恥ずかしいものです。そこで、以下のようなポジティブな声かけを意識してみてください。
NGな声かけ:「こんな前のことも分からなくなってるじゃない」
おすすめの声かけ:「今やってるゲームの難易度が高すぎるだけだよ。ちょっと前のステージに戻って、武器を強くしてからもう一回ボスに挑みにいこう!」
勉強を「過去のダメ出し」にするのではなく、「これからの武器集め」として捉えられるよう、大人がワクワクしたトーンで背中を押してあげることが成功の秘訣です。
まとめ:急がば回れが、一番の近道
我が子が苦戦しているのを見ると、どうしても「みんなと同じペースに追いつかせなきゃ」と焦ってしまうのが親心です。
しかし、勉強において「急がば回れ」は最高の近道になります。
いつでも戻っていい、いつでもやり直せる。そんな安心感をお家や周りの大人が作ってあげることで、子どもはまた自分の足で歩き出すエネルギーを充電することができます。
「最近、勉強で行き詰まっているな」と感じたら、ぜひ「ちょっと前のステージ、一緒にのぞいてみようか」と声をかけてみてくださいね。